調剤薬局からドラッグストアへの転職ガイド|成功のポイントや注意点、メリット・デメリットも徹底解説

坪田  のり子

薬剤師/執筆者

坪田 のり子

2024/12/12 公開

ご自身の今後のキャリアを考えた時に、調剤薬局からドラッグストアへの転職に悩まれる方もいるでしょう。調剤薬局とドラッグストアでは求められる薬剤師の能力やスキルに多少違いがあります。ドラッグストアでは、OTC販売をはじめ、さまざまな商品を取り揃えているため、幅広い知識が必要となってきます。今回は、転職をする際の参考になるよう、調剤薬局とドラッグストアでの雇用条件の違いから、働き方の違いを紹介していきます。

調剤薬局とドラッグストアの違い

調剤薬局とドラッグストアでは、薬剤師としての働き方に違いがあります。

調剤薬局
主に処方箋に基づいた調剤業務を行い、患者さんとの対話を重視します。服薬指導や健康相談など、患者さんに密接に関わることが多いのが特徴です。
ドラッグストア
調剤業務だけでなく、OTC医薬品や日用品、化粧品など幅広い商品を取り扱います。販売業務や商品管理、在庫管理なども求められ、多様なスキルが必要とされます。

年収比較

調剤薬局とドラッグストアの薬剤師の年収を比較すると、一般的にドラッグストアの方が高いです。厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、令和5年の薬剤師全体の平均年収は約550万円です。ドラッグストアの薬剤師は、この平均を上回ることが多く、特に大手チェーンでは更に高くなる傾向があります。

一方、調剤薬局の薬剤師の年収は、ドラッグストアよりもやや低めですが、薬剤師全体の平均年収を上回ることが多いです。ただし、地域や規模によって差があり、地方では薬剤師不足のため、都市部よりも高給になることがあります。

待遇比較

調剤薬局とドラッグストアの待遇には、いくつかの違いがあります。
ドラッグストアは一般的に年収が高く、大手チェーンでは福利厚生が充実しています。一方で、営業時間が長く、土日祝日の勤務や遅番シフトが多い傾向があります。
調剤薬局は、ドラッグストアに比べて年収はやや低めですが、労働時間が比較的短く、プライベートな時間を確保しやすい傾向があります。ただし、繁忙期には残業が増える可能性があります。

転職を考える理由

調剤薬局からドラッグストアへ転職する理由はさまざまです。以下のような理由が一般的です。

多様な業務経験を積みたい
調剤業務だけでなく、幅広い商品の販売やマーケティングの経験を得ることで、薬剤師としてのスキルを広げることができます。
勤務時間や環境の改善
ドラッグストアはシフト制が多く、比較的柔軟な働き方が可能です。ライフスタイルに合わせた勤務時間が選べる点も魅力です。
キャリアアップの可能性
大手ドラッグストアでは、店舗の管理職や教育担当者など、キャリアアップの道が多く用意されています。

ドラッグストアの1日の仕事の流れ

ドラッグストア薬剤師の1日の仕事の流れのイメージです。

開局準備
店内掃除やPC・分包機など機器の立ち上げ
商品の陳列・棚整理、朝礼
午前勤務
調剤・監査・投薬。薬歴管理。医薬品の発注や検品、在宅訪問、OTC販売や健康相談受付
商品の品出し、レジ打ち、POP作成など
昼休憩
休憩室にて昼食をとります。
午後勤務
午前中同様の業務を進めながら午後勤務を行います。
日によっては店舗会議、店長会議などミーティングが入ることもあります。
閉局業務
レジ締め、処方箋まとめ、片付け、引き継ぎ業務、業務日誌作成など
勤務終了
終了後に資格取得に向けて勉強会などがある場合もあります。

ドラッグストア薬剤師のメリット

ドラッグストア薬剤師としてのキャリアには、さまざまな魅力があります。多様な業務を経験しながらスキルを磨くことができるだけでなく、柔軟な働き方やキャリアアップの機会も得られます。ここでは、ドラッグストア薬剤師の主なメリットについて詳しく見ていきましょう。

多様な業務経験が得られる

ドラッグストアでは、調剤業務だけでなく、OTC医薬品の販売や健康相談なども行います。このため、幅広い知識と経験を積むことができ、薬剤師としてのスキルが多様化します。新たな製品やトレンドを学ぶ機会が増え、自己成長にもつながります。

フレキシブルな勤務形態

ドラッグストアはシフト制が一般的で、勤務時間が柔軟です。ライフスタイルに合わせた働き方が可能で、家族との時間やプライベートも大切にしやすいです。たとえば、夜勤や週末の勤務が可能なため、他のライフスタイルに合わせた調整がしやすくなります。

キャリアアップの機会

大手ドラッグストアでは、店舗の管理職や教育担当者など、多くのキャリアパスがあります。自分の成長に合わせた役割を選ぶことができ、スキルを磨く環境が整っています。特に、マネジメントスキルを身につけることで、将来的なキャリアの選択肢が広がります。

顧客との接点が多い

ドラッグストアでは、直接顧客と接する機会が多く、薬剤師としての役割を実感しやすいです。患者さんとのコミュニケーションを通じて、接客スキルも向上します。リピーターが増えることで、顧客との信頼関係を築くことができ、仕事のやりがいにもつながります。

ドラッグストア薬剤師のデメリット・注意点

ドラッグストアでの業務には多くのメリットがありますが、当然デメリットや注意点も存在します。ここでは、転職を考える際に知っておくべきポイントについて詳しく説明します。

業務の幅が広がるがゆえのプレッシャー

多様な業務をこなす必要があるため、業務量が増え、プレッシャーを感じることがあります。特に、調剤業務に集中したい方には向かない場合もあります。繁忙期には業務が重なり、ストレスが増すことが考えられます。

接客に関するストレス

多くの顧客と接するため、時にはクレームやストレスの原因となる場面もあります。適切な接客スキルが求められるため、精神的な負担を感じることもあります。顧客のニーズに応えられない場合、自己評価が低下することもあるため、対処法を学ぶことが重要です。

業務量の変動

繁忙期やセール時期は業務量が急増することがあります。このような状況では、急な対応や残業が求められる場合があります。特に、季節商品やプロモーションに対応するため、柔軟な思考と迅速な行動が求められます。

専門的な知識の必要性

OTC医薬品や日用品に関する知識も求められるため、専門外の知識を身につける必要があります。これが負担に感じることもありますが、新たなスキルを習得する良い機会とも捉えられます。

【採用側の視点】ドラッグストア薬剤師に求められるスキルと人物像

ドラッグストアへの転職を考えている薬剤師は、採用側が求めるスキルと人物像を理解し、書類作成、面接を行うことで自分の条件に見合うドラッグストアへ転職が成功の可能性が高まります。

相手目線のコミュニケーション能力

ドラッグストアの薬剤師には、幅広い年代層とコミュニケーションスキルが求められます。専門知識をわかりやすく説明する能力、顧客のニーズを適切に把握するスキルが必要です。また、登録販売者など薬剤師以外の職種が働いている職場も多く、他のスタッフとの協調性も不可欠です。面接時の受け答えや態度から、これらの能力を見極めようとしています。

積極的に顧客とかかわる姿勢

ドラッグストアでは、薬剤師も一般用医薬品の販売をするなど医薬品販売の業務も担います。そしてただ販売するだけでなく商品提案力や健康アドバイスができる薬剤師を求めています。そのため積極的に顧客と関わっていけるかを見ています。過去の販売経験や顧客対応の具体例を挙げられることが、採用時の強みになります。

リーダーシップと柔軟な対応力

ドラッグストアの薬剤師は、店舗運営や他のスタッフの管理も担当することがあります。リーダーシップや問題解決能力、状況に応じた柔軟な対応力が重要です。また、薬剤師業務以外の店舗業務にも積極的に取り組む姿勢が求められます。このような能力があり、新しい業務にも対応するチャレンジ精神がある人材かどうかを面接で見ています。

『薬剤師』『転職』『ドラッグストア』に関するよくある質問Q&A

ドラッグストア薬剤師への転職について考えれば考えるほど、いろいろな疑問や不安が出てくるのではないでしょうか。そこで、よくある質問とその回答をQ&A形式でまとめました。転職を考えるみなさまの疑問や不安を解消し、より良い転職決断のサポートを目指します。

ドラッグストアへの転職にはどれくらいのスキルが必要ですか?

坪田  のり子

薬剤師

坪田 のり子

ドラッグストアへの転職には、以下のようなスキルが求められます。

  • コミュニケーション能力: 顧客との対話や同僚との連携に不可欠です。症状の聞き取りや適切な医薬品の提案ができることが求められています。
  • 幅広い商品知識: 医薬品だけでなく、日用品や化粧品などの知識も必要です。
  • 販売スキル: OTC医薬品の販売や健康相談に対応できる能力が求められます。
  • 臨機応変な対応力: 予期せぬ質問や状況に適切に対処する能力が重要です。
  • マルチタスク能力: 品出し、レジ、接客など多様な業務をこなす必要があります。

多くのドラッグストアでは研修制度も充実しているので、ドラッグストア未経験でも安心して挑戦できます

ドラッグストアは忙しいですか?

坪田  のり子

薬剤師

坪田 のり子

ドラッグストアの忙しさは、店舗の立地、スタッフの人数に左右されます。そして、レジ打ちをするのか、OTC販売を積極的に行っているのか、品出しをするのかによって、業務内容は大きく変わるので、その点は面接で確認するとよいでしょう。また、『忙しい』は個人の感覚なので、自分にとっての忙しさのボーダーラインをイメージし、そのボーダーラインを超えない環境なのか確認することで転職後のミスマッチを防ぐことができます。

転職後の研修制度はありますか?

坪田  のり子

薬剤師

坪田 のり子

ドラッグストアには充実した研修制度があります。多くの大手チェーンでは、新入社員だけでなく経験者に向けた、さまざまな研修プログラムを用意している企業が多いです。

一例として

  • 専門知識研修:医薬品、化粧品、健康食品などの商品知識
  • マネジメント研修:店長やスーパーバイザー向け

また、eラーニングシステムを導入し、自己学習の機会を提供している企業も多くあります。研修制度は比較的充実しているといって良いでしょう。

まとめ

調剤薬局からドラッグストアへの転職は、薬剤師としてのスキルを広げる良い機会です。多様な業務を通じて経験を積み、フレキシブルな勤務形態でプライベートとの両立も図れます。しかし、業務の幅が広がることでプレッシャーやストレスが伴うこともあるため、適切な対処法が求められます。この記事を参考に、新しいキャリアを築いていくことを応援しています。

坪田  のり子

執筆者坪田 のり子

薬剤師国家資格 研修認定薬剤師

東邦大学薬学部卒業。その後、地域密着型の調剤併設型ドラッグストアに勤務し、薬剤師として臨床に携わりながら、採用・教育研修の責任者として薬剤師の人材育成に従事。2024年にshukriya(シュクリア)創業。
Instagramで1.1万人のフォロワーを持つ転職アカウントを運用し、求職者の悩みや不安に寄り添い、アドバイスを行ってきた経験をもつ。

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